白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
last White Christmas***
僕らは思いで創りをした。いっぱいの。沢山の二人の思いでと言う記憶を。
僕は沙織と出会う事が出来て、本当に良かったと心から感じている。
偶然が引き起こした人との出会い。
運命という悪戯が引き起こした出会いと切っ掛け。
今思えば、こうして沙織と一緒にいられるのは美野里のおかげかもしれない。
美野里は僕から沢山のものを貰ったと言っていた。でもそれよりももっと沢山の事を僕にくれたのは美野里の方だ。僕はそれにようやく気付いた。
「あ、達哉さん、先にお風呂入っちゃって。お夕食もうちょっとかかるから」
キッチンに居るお母さんが僕に告げる。
「はい、分かりました。今日はお父さんは」
「今日は定例の飲み会。あの人ね、大学時代の人達と毎月日を決めて飲みに行ってるのよ」
「いいですね。ずっと続いてて」
「そうね。あの人だからね。さ、沙織あなたも手伝って」
「はぁい」少し面倒くさそうに沙織は言う。でも
「達哉ぁ、先にお風呂入ってて、その次私はいるから」
「解ったよ」「うん。お風呂上がったら一緒に飲も。お父さんだけ飲んでるなんてずるいじゃない」
「ああ、それじゃ先に入ってくる」
暖かい湯が体に染みる。
もう12月になる夕暮れの外は寒さを増すばかりだ。
冷えきった体には風呂が一番温まる。体も心も。
そう言えば、12月にはクリスマスと言うイベントがある。
何か沙織にプレゼントしたいな。そんな思いが心を揺さぶる。
まだ、12月の始め。街はその季節の表し方を悩んでいる。でも、もう少しすれば、街の夜は幻想的で華やかでそれでいてもの悲しいイルミネーションが街行く人々に、あのイベントがもう間近かであることを告げさせる。
僕と沙織はどんなクリスマスを送るのかな。にやけながらも心のどこかに寂しさを感じていた。
ガラッ。風呂の扉が開いた。
「達哉、まだ上がんない」「ああ、ごめんもう少しで上がるよ」沙織はふうんとして「私も入っちゃお」と言って服を脱ぎだした。
「おい沙織、お母さんもいるぞ。それに佑太だって」
沙織は平然としながら裸になり
「佑太なら大丈夫。さっき電話していたから。多分彼女ね、あと30分は電話しているわよ」