蝶と空
深海の家
ザザーン… ザザーン
夜の海は真っ黒で
吸い込まれそうで怖い
「立ち上がれる?」
君は私を覗き込んで聞いたけれど
「……ううん…」
腰が抜けて、まったく力が入らない。
「手」
君の少し大きな手に、私の手が重なって
柔らかい体温を感じる
「家、近く?」
「分かんない…ここが何処かも知らない」
「そっか。じゃあもう、家来なよ」
「ちょっ!」
急に手を掴まれて、すくっと自然に立ち上がった。
「ほら、立ち上がれてるよ」
ほんとだ。
あたし ちゃんと立てた。
あなたの力を借りているけれど
それでも。