蝶と空
「声と映像?」
私が声が聞こえたり映像が見えたりすることを言うと、美樹は顔をしかめた。
「それって見覚えとか、聞いたことある声とかっていうのはないの?」
「うん…なんていうか、少しだけなんだけどね」
「うん?」
「少しだけ…懐かしいような…どうにもならないくらい胸が熱くなるの」
私は自分の胸を、パジャマの上からきゅっと掴んだ。
今でもあの感覚が戻ってきそう。
熱い熱湯が、私の胸に注がれたような。
「そっか…。じゃあ紗知が小さい頃の記憶にはない?よく言うじゃない、小さい頃の記憶が見えたりとか」
そう言われた時、私はドキリとした。
「…いの…」
「え?ごめん、聞こえないよ?」
「小さい頃の記憶、私無いの」
下を向いてしまった。
今まで避けてきた事だった。
小さい頃の記憶が全く無いこと。
「それ…どういうこと?」