蝶と空
ブクブクブク…
深く 深く
沈んでいく。
ここは
海
目を少し開けてみる。
水中に差す光と
昇っていく呼吸の気泡。
そして
自由に漂う私の髪
ブクブクブク…
沈んでいく
前に
あなたの手を
掴めたのなら。
「おはよう、紗知ちゃん。あら…すごい汗よ」
「はぁ…はぁ…」
夢を見ていた。
蒼い海に沈ずんでいく夢を。
深く沈んでいく夢を。
苦しくて
怖かった。
「汗ふくわね」
返事をしない私を気にせずに、あの桜木さんは私の体を拭いていった。
私はそのまま無力に座り、さっきの夢を最初から思い出していた。
「誰か、来てくれたかな」
「え?」
「あのままだったら…」
誰か来てくれたのだろうか。
私を助けに
来てくれたのだろうか
意味も無くそんな疑問が浮かんだ。
寝ぼけてるのかもしれない。