蝶と空


「ん〜!やっぱり外は気持いいわね!」


病院の敷地内にある小さな中庭。

空気がきれいな気がする。なんとなくだけど。


私も桜木さんと真似をして、小さくだけれど深呼吸をした。



「ね?気持いいでしょ」


桜木さんは自慢げに笑う。


私は目を瞑ってみた。



本当に今まで溜っていた体の老廃物が抜けるような感じがする。


こんなにすがすがしい気持は、すごく久しぶりで。



目を静かに開ける。



そこには笑顔の桜木さんがいた。


桜木さんは魔法使いみたい。

どんなに沈んだ私も、軽くしてくれるような…。


そんな存在だと思った。




「私もね、紗知ちゃんみたいになったことあるの」


風に揺られながら

彼女は急に喋りだした。


私は黙って聞くことにした。


だって、なんだかそんな気がするから。



静かに聞きたい気分だった。
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