蝶と空


「自傷行為までしたことあるの。毎日が辛くて仕方なくて」


嘘…

桜木さんが自傷行為?

私は驚きしかでてこなかった。


私の中の彼女は、笑顔で

明るくて


いつも辛いことなんて吹き飛ばしてしまうような人。


けれどそんな彼女になるまでには、たくさん自分と戦ってきたんだろう。

彼女も彼女なりに辛い時期があったんだ。



「でもね、ほら。あたしを見て」

桜木さんはそう言って私の目を見た。



「今じゃこーんなに、幸せそうな顔できるの」

目を細めた笑顔。

それは幸せ以外の何物でもない。


笑顔から、彼女の存在から幸せが滲み出ていた。



「人間生きていればね、死にたくなる日もある。けれど、こんな風に幸せを感じれるような日は、あなた次第でもっとできるわ。」


「私…次第」

「そうよ。きっと来るわ。まだまだかもしれないけど、永遠なんてこの世には存在しない。何にでも終わりは来る」


桜木さんはそう言って、少し真面目な顔をした。



本当に来るの?

今じゃ信じられないけれど…


乗り越えた彼女が言っているのなら、信じてみてもいい。




私にもどうか


彼女みたいに笑える

幸せが来ますように



今はただ、願うだけ。




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