蝶と空
「美樹…美樹…。」
透明なガラスの向こうに眠る美樹を、私は見つめることしかできなかった。
付け睫毛に更にマスカラ付けた長い睫毛。
茶色に染めた明るい髪。
薄い眉。
手首にはの銀のブレスレット。
美樹はいつも派手で。
昔の私はそこがあまり好きになれなかった。
なのに今はこんなに近くにいる。
愛しいと思う。
心配でしょうがない…。
私は自分の服の袖をギュッと掴んだ。
心臓がうるさいくらいに鳴っている。
こういう時、人は泣けないものなんだ。
不安でしょうがなくて
でも何もできなくて。
だから余裕がない。
泣く余裕なんてない。
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