蝶と空
「あれ、気に入らなかった?」
洗面所から出てきた私に、彼は目を開いて言った。
「ううん、違うの!」
それは
ワンピースを着なかったから。
どうしても着れなかった
昨日から着ているネグリジェと同じ、いい匂いがして
なぜか、着てはいけない気がしたから
この服を着てる女性は誰なのか、
そんなのまったく分からない。
もしかしたら彼の愛する人なのかもしれない
だから
着てはいけないんだ。
私はただ、助けられただけ。
家や学校のことで少しいっぱいになって、ちょっと気が狂った時に
助けてくれた
だけだもの。
これ以上彼に入り込んではいけない
そう私の頭が叫んでる
だから昨日と同じ、着慣れたTシャツとジーパンを着た。