蝶と空
彼は悲しい目で私を見つめた。
そんなの見なかった振りをして、私は言う。
「ごめん…もう…帰るね。助けてくれて、ありがとう」
「そんなこと…ないから」
「……え?」
「ちょっと、待ってて」
そう言ってまた、昨日と同じようにリビングを出て行った。
今、なんて言ったの?
微かに聞こえる声で、はっきりと聞こえなかった。
ただぼーっとしてしまった。
しばらくして、勢いよくリビングのドアが開く。
そして入ってきた君の手には、
「これを、君のにあげる。おまじない」
「おまじない…」
「君が、笑顔で過ごせるように。俺から」
彼の手のモノが
私の手に落ちた。