蝶と空



「荷物、これしか持ってきてないよね」


「うん」



爽やかな海風が、私と彼の間を通り抜けた。



「本当に…ありがとう。私今まで自分…潰して…きて」



勢いよく、体から熱がこみあげてきて


その熱が涙へと変わった。




「でも、すごく今…君に会えて余裕ができたの…!だからあたし頑張るね!」


「………うん。頑張って」


あれ?

どうして君も泣きそうなの?



「じゃないと、意味ないからな。俺もお前も、全部」


「意味…?」



え…


どういうこと?


私の頭に浮かぶ“?”。




「きっと、楽しく生きて。笑って生きてほしい」


「うん…。本当にありがとう…」



“?”はすぐに消えて、私は悲しくなった。


彼にはもう、会えない気がして。



< 24 / 112 >

この作品をシェア

pagetop