蝶と空
「荷物、これしか持ってきてないよね」
「うん」
爽やかな海風が、私と彼の間を通り抜けた。
「本当に…ありがとう。私今まで自分…潰して…きて」
勢いよく、体から熱がこみあげてきて
その熱が涙へと変わった。
「でも、すごく今…君に会えて余裕ができたの…!だからあたし頑張るね!」
「………うん。頑張って」
あれ?
どうして君も泣きそうなの?
「じゃないと、意味ないからな。俺もお前も、全部」
「意味…?」
え…
どういうこと?
私の頭に浮かぶ“?”。
「きっと、楽しく生きて。笑って生きてほしい」
「うん…。本当にありがとう…」
“?”はすぐに消えて、私は悲しくなった。
彼にはもう、会えない気がして。