蝶と空
もうさよならを
しなければいけない
そう思ったとき。
「本当、美人になったね。」
彼が目を細めて、呟くようにそう言った。
「…え」
「あ…違う。なんでもないから!」
すると今度は自分で自分の口を押さえて、もう片手でポン、と私の背中を押した。
私は一歩、前へ出た。
「俺の事はもう忘れて。そのかわり、俺も君を忘れるから」
「…ちょっと…待って」
「じゃあ、元気で。」
淡々と進む話。
意味が全部、分からないよ。
それに君に会えたこの記憶を、なかったことにするなんて。
悲しいから。
「じゃあね」
「う…ん」
でも
どうにも彼に関わってはいけない気が邪魔して。
無理に聞くことはできなかった。
勇気がなかった
これ以上迷惑かけたくない。
最後に見た彼のほほに
涙が見えた気がした
そして私は
前を向いた。
昨日とは違う、キラキラしてる青い透き通った海と
カモメの鳴き声の中
私は前へ
振り返ることなく進んだ。