蝶と空
「紗知?どういう事?」
「うんとねー、空が痛くなるから、内緒」
紗知は、はぶらかすばかりで具体的な事は何も言おうとしない。
痛くなるって一体なんなのかも、分からない。
このとき僕はいい加減、紗知に言わせようと思った。
なぜ僕の所に来て泣くのか
そもそも何が辛いのか
もう
見ていられなかった
「紗知…?」
「んー」
「いい加減、話してよ。何がそんなに紗知を苦しめているのか…僕、そんなに信頼ない?」
そう言うと紗知は、黙った。
シンとした緊張感のある空気が、寝室に流れる。
「空は………大事だから」
かすれた紗知の声は、それだけ言って止まった。
紗知は深い眠りに付き、僕も寝ようと毛布をたぐり寄せた。