蝶と空


最初に


怖い、という感情。



いくらなんでも虐待、殺すという単語にまず恐怖を感じた。




次に、なんだか分からない
胸に刺さるような感情。



紗知、紗知、紗知。



そればかり心が唱えた。






次にきたのは、悔しさだった。



紗知になんにもしてやれなかった


紗知は苦しんでいたのに


泣いていたのに




無力。




「空が痛くなるから」


その意味。





全部がぐちゃぐちゃになって、


胃に穴が開いたように痛い。





「空くん…どうか、どうか紗知を助けてやって…!」

泣いてすがる紗知のお母さん。




もう



わからなかった







僕はパジャマのまま

靴も履かずに飛び出した。


家に急いで帰った。












< 37 / 112 >

この作品をシェア

pagetop