蝶と空
最初に
怖い、という感情。
いくらなんでも虐待、殺すという単語にまず恐怖を感じた。
次に、なんだか分からない
胸に刺さるような感情。
紗知、紗知、紗知。
そればかり心が唱えた。
次にきたのは、悔しさだった。
紗知になんにもしてやれなかった
紗知は苦しんでいたのに
泣いていたのに
無力。
「空が痛くなるから」
その意味。
全部がぐちゃぐちゃになって、
胃に穴が開いたように痛い。
「空くん…どうか、どうか紗知を助けてやって…!」
泣いてすがる紗知のお母さん。
もう
わからなかった
僕はパジャマのまま
靴も履かずに飛び出した。
家に急いで帰った。