蝶と空
なのに、なのに。
「空、朝ごはん食べたい」
「そうだね。リビング行こうか」
そうして朝ごはんを食べるために、僕たちは温かい毛布から出た。
ひやりとする床に足を置く。
カチャン。
紗知の部屋のドアを開いて、廊下に出た。
「さむ〜い!ね、空!」
「そうだね。早く行こうか」
秋の早朝だ。
息が白くなるほど寒かった。
だから小走りで紗知とリビングのドアへ向かったんだ。
今でも覚えている。
足が痛むぐらいの、床の冷たさ。
二人の白い息と、廊下を駆ける音だけが響いている
静かな空間。