蝶と空
警察は、父さんが死ぬ直前に呼んだらしいということだった。
僕は父さんに生かされた。
「おばさん!紗知は…紗知は大丈夫なんですか…?」
「まだ意識戻らないのよ。思いきり殴られたそうじゃないの…いやぁね」
紗知はあの後すぐに、救急車に運ばれた。
鉄の棒で殴らたため、血がにじんでいたし意識はなかった。
事件から一ヶ月が経っても、紗知は目を覚まさなかった。
僕はというと、親戚のおばさんの家にお世話になっていた。
もちろん父さんと母さんが死んで辛かったけど、紗知だけは。
紗知だけは無くしたくないという気持が、かろうじて勝っていた。
紗知、目を覚まして
おはようと言って
笑って
僕の名前を呼んで
空と呼んで
君がいないと
僕はどうしたらいい?
何もかもなくして
空っぽになった。
紗知がいなきゃだめなんだよ。
どうやって生きればいいのか分からなくなった。