蝶と空
薔薇と緩さ
“あなた、悲しいのね”
それがきみの最初の一言。
まだ小学生のぼくは、毎日泣いてた。
学校もいかずに、ボロボロになっていく自分。
そんなある日、僕はあの草原に一人でいた。
目は涙で真っ赤になってたし、頭も心もからっぽ。
幸せだったふたつの家を見つめて、静かに涙を流す。
風が僕の間を抜けた…
そのとき。
「あなた、悲しいのね」
ハッと後ろを振り向くと、見知らぬ少女と、その子のに寄り添う歳を取った白い髭の細身の男がいた。
「…だれ、ですか」
僕の低い声が、草原に響く。
「美しい草原だから、来てみたのよ。そうしたら、美しい少年がいるから」
君はまっすぐに僕を見つめ、柔らかく微笑んでそう言った。