蝶と空



「お嬢様、点滴の時間でございます」



「ありがとう、タカ」




ローズは一日に一回、ベッドの上で点滴を受ける。


それは、病気だからじゃない。




成長しないため。



外見が、成長しないため。
体が成長しないため。


母親に小さいころから薬をたくさん飲まされていたローズは、今も飲まなければバランスが崩れるんだという。



本当は成長したかったと


大人の姿になりたかったと


ローズは涙を落としたこともある




「空のように成長したかった…でも母さんが…異常なほど過保護だったの…この体は、顔は、一生変わらないのよ」



「大丈夫。ローズは美しいから。俺とタカが愛しているから…」



「うん…」







そうして



日々を過ごしてゆく




新しい学校には、あまり行かない


タカが学校の大きな援助をしているから、行かなくても卒業できる。





タカはいつも俺とローズを、一番に大切に思ってくれてる。





幸せなのか


幸せじゃないのかなんて




分からないけど




いなくなったりしない、誰も。



俺を必要としてくれている


< 63 / 112 >

この作品をシェア

pagetop