蝶と空
過呼吸
「過呼吸症候群ですね」
私の方を見向きもせずに、白髪の混じる医者はそう言い放った。
ずっと、何かを書いている。
ここはどこにでもあるような大きい総合病院。
お母さんはすごく心配していて、私のすぐ後ろに立っている。
「かこきゅう…しょうこうぐん、ですか?それは大丈夫なんですか!?」
「ちょっとお母さん、落ち着いてよ…」
本当に心配症で
過保護で
それがあたしのお母さんだ。
それにしても過呼吸症候群って、あまり聞かない名前。
私はついさっきこの目の前にいる医者にそう告げられたけど、たぶんお母さんが心配するほどのものじゃないと思う。
「とりあえず、また来てください。過呼吸になりそうになったら…お母さん、」
「はい!」
「背中をさするなどして落ち着かせてあげてください。それでも治まらないようでしたら、紙袋を用意して口を塞いで。」
「わかりました!ありがとうございました!」
それから私とお母さんは、三日後にまた来ることを決めて家に帰った。