蝶と空


登校する道は


いまだに好きになれなくて─。







「そういえばさ、二組の荒井が話したいって言ってたけど…やっぱり断るよね?」

私と美樹が、廊下で時間を潰しているときだった。

美樹が隣で、遠慮がちにそう言った。


「あ…うん。ごめんね」

「紗知と話したいって言ってあたしに近づいてきたやつ、これで五人目だよ。一人ぐらい話してみたら?新しい発見があるかもよ」


「うん、そうなんだけど…ちょっとそういう気分じゃなくて」


「そっか…。うん。紗知は紗知のペースがあるもんねっ。ごめん!」

「ううん!いいの…謝らなくちゃいけないのは、私の方だから…」


本当に最近そういうのが多くて困ってしまう。


美樹はモテていいなとか言ってくるけど、私はよく分からない

そんなこと


してる余裕がない。



恋愛にすごく抵抗がある。


何かが違う…。


私はそればかりで。

みんなの恋愛に対する思いはどんなものなんだろう。

「いいな紗知はモテて〜。あたしなんてさ、自分からアピらないと誰も近づいて来ないの」

「そんなこと、ないよ!」


はぁ、疲れた。

慰めの言葉っていちいち疲れる。


< 73 / 112 >

この作品をシェア

pagetop