蝶と空
「紗知、暖かくしていきなさい。外は寒いわ」
「うん」
そう言われて渡された、白地に黒いチェックのマフラーを首にふんわりと巻いた。
そのせいで長い髪が短く見えた。
お母さんがカチャリと音を立てたドアから、ひんやりした風が玄関に入り込む。
私はお母さんの後に外に出て、空を見上げて息を吐いた。
私の吐息は白くなって天に消えていく…
「ほら紗知。お医者様が待ってるのよ」
「はい」
小走りでお母さんに並んだ。
これから、また病院に行く。
過呼吸症候群だと診断された病院に、私は通っていた。
病院は徒歩で5分。
わりと近い。
これであの病院に行くのは、3回目だ。
「いつも言ってるけど、学校休んでもいんだよ?」
「うん…でも…友達とか心配すると思うし」
「そっか。紗知は偉いのね。でも、いくら友達思いっていったって、そんなことまで気にする必要ないのよ」
うん。分かってるよ、
お母さん。
あたしは友達が理由じゃない。
家にいた方が、詰まるんだよ
夜中に過呼吸になってること
知らないくせに。