蝶と空


「紗知ちゃーん。やっぱり勉強とか辛い?」


「いいえ、別に」


「そ〜お?あたしは辛かったよー。高校の時はさ、レポートが多くて…ねぇ、紗知ちゃんもそうじゃない?」


「いえ…別に」



カウンセラーをしてくる病院の若い看護婦。

もう慣れたけれど、カウンセラーはやっぱり嫌い。


自分も辛かったとか言って、私の本音を聞こうとしている。



私はそれに、目をそらして答えるだけ。


紫色のピアスを握りながら、ただ適当に答えるだけ。




「紗知ちゃんモテるんじゃない!?スッゴい美人だしね!」


「いえ、別に」



看護婦の濃く赤い口から、私への質問が次々に投げられる。





『いえ、別に』


私はただそれに

外を眺めながら淡々と答えていくだけ…。




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