蝶と空




ゆっくり




ゆっくりと





目が開き、





そして






「紗知!?紗知…!目が覚めたのね!!」





私はこの時思ったんだ


目が、覚めなければよかった





もう現実に

ただ疲れていたから。





騒ぎ立てる看護婦やお母さん達。


私はそれを白い病院の天井を見ながら、ぼーっと聞いていた。





「紗知、頭痛くない?まだ起きない方がいいわよ!あ、冷たいお茶飲む?」


お母さんは、私に答えるすき間がないくらい話かけてきた。



そしてなぜか

涙が出た




またこの世に


生まれた気分だったから。



また、私は生まれてしまった


どうしよう

ねぇ助けて



また辛い日々を過ごしていかなきゃいけな…




「……痛いっ…!!」


急に頭痛が私を襲った。


「…あ…っ…」



今までで一番、激しい痛み。



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