蝶と空



私しかいない、ガランとした病室。


ベッドの上で座りながら、自分の両手をただ見つめてみる。





「あたし…このまま…」




無神経に出る声が、空気に溶けていく。




「…い…なくなり…たい………」







なく

なって


しまえばいいのに



この空気中に溶けて


空へ昇って



時には雨になり


風になり



『高木紗知』という人間


すべてなかったことになれば



いいのに




バカな考えだって、分かってる







でも、


私は…

















「紗知!!」




「──────え」







ドサッ。






私は、急に勢いよく病室に入ってきた誰かに




強く、強く


抱き締められた。







「…もう…っ…心配したよ!!」




私がその誰かを


涙ぐむ美樹だということに気付いたのは





3秒後のことだった。






< 90 / 112 >

この作品をシェア

pagetop