蝶と空
私しかいない、ガランとした病室。
ベッドの上で座りながら、自分の両手をただ見つめてみる。
「あたし…このまま…」
無神経に出る声が、空気に溶けていく。
「…い…なくなり…たい………」
なく
なって
しまえばいいのに
この空気中に溶けて
空へ昇って
時には雨になり
風になり
『高木紗知』という人間
すべてなかったことになれば
いいのに
バカな考えだって、分かってる
でも、
私は…
「紗知!!」
「──────え」
ドサッ。
私は、急に勢いよく病室に入ってきた誰かに
強く、強く
抱き締められた。
「…もう…っ…心配したよ!!」
私がその誰かを
涙ぐむ美樹だということに気付いたのは
3秒後のことだった。