蝶と空
「…あたし…紗知が苦しんでたの知ってたのに…なにもできなかった」
美樹は涙声でそう言いながら、その場で泣き崩れた。
「そんなこと…ないよ…」
まさか
美樹が私の嘘に気付いていたなんて。
私は驚きしか出てこなかった。
「…ごめっ…あたし…紗知の力になれなかった。どう接していいか分からなくてっ…でもすごく心配してたんだよ…こんな…あたしでも…」
「もういいよ…あたしこそ心配してくれる美樹に、気付かなくて…ごめん」
美樹。
ありがとう
私のほうが
美樹に気付いてなかった。
こんなに泣くほど心配してくれる人が、私の近くにいた。
私はそっと隣にしゃがんで、美樹の背中を擦った。
美樹の体温に触れたとき、私に熱い何かが込み上げてきて
目を瞑ったら
ほろりと涙がこぼれた。
「…美樹…ありがとう…」
ずっと美樹は叫ぶように泣いていて。
私はその涙が、すごくきれいだと思った。