蝶と空
まるでペンキを塗ったような水色の空に、一筋の飛行機雲が続く。
「戻ろっか。風邪ひいちゃうし」
美樹がそう言った。
「うん」
私は小さく返事をして、点滴用の鉄のポールを引こうとした時。
「私が引いてあげるよ」
美樹が私のポールを引いてくれた。
「ありがとう」
この時、私は初めて友達というものを感じた気がした。
友達は、こんなに暖かいぬくもりを感じることができるものなのか。
心強くて安心する…。
なつかしい気がするのはなぜだろう。
あ…。
なにか来た。
「あっ…痛……」
激しい頭の痛み。
なつかしさと同時にやってくる。
私は美樹と戻る途中、病院の廊下でうずくまった。
急に
どこか別の世界へ
飛んでしまうように…
バタン。
私は倒れた。
「紗知!?紗知!誰かきて!」
美樹が私を呼ぶ声は
一瞬だけ私を引き戻したけれど
何処か違う世界へ
もっと
もっと遠い彼方へ
私は堕ちてゆく…
『貴方だけが知っていること、あるでしょう?』
窓から見える太陽がそう言った。