甘言師、臥雲旦陽の甘い毒

 タンタンーと規則正しいリズムで机に乗せられる指を見ながら、国府谷は考えていた。

 確かにこの部屋にはトラブル防止も兼ねて防犯カメラが設置されている。

 だが初めてあった依頼人から殺人を白状させることになんのメリットがあるだろうか。

 社会貢献?

 そんなものは甘言師イコール詐欺師と言う認識の国府谷でも成り立たない方式だ。

 では、なぜ動機を知る必要がある?

 国府谷は小野の額に浮かぶ大量の汗を見た。

 異常な量の汗だと思った。

 自供をとられるとあっては困惑し汗を流すのも納得がいく。

 不意に、臥雲からの視線に気づき、彼を見た。

 臥雲はいつもと同じ冷静な細い目で、国府谷を見ていた。

 俯いた髪の隙間から、見ていた。

 
< 10 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop