甘言師、臥雲旦陽の甘い毒
「…死には痛みが伴う…」
「ワタシだって痛かったんだ…今も…胸が痛む」
「…それでも物理的な痛み、とくに死に対しての恐怖に比べれば易しいものでしょう」
「…たしかに…痛かっただろうな…でも…あいつだって俺を苦しめた…俺だって痛かったんだ」
視線だけだったものが、顔ごと、体ごと臥雲へ向いた。
「…それでもあなたは生き、彼女は死んだ…この事実は永遠に変わらない」
「俺を責めないでくれ!もう十分すぎるくらい俺は俺を責めた!もう十分だろ?それなのに、どうして俺を苦しめる!助けてくれ…おねがいだ」
叫びによる懇願は、身体を抱えながらだった。
姿勢を崩し、立ち上がった臥雲は見上げる小野に右手の人差し指を突き付けた。