甘言師、臥雲旦陽の甘い毒

 「あ・・・はぁ…小野と言います」

 疑問と先ほどからある疑惑が目に見えるようだった。

 国府谷も同じく不安に思い、臥雲を見ていた。

 「…あの、依頼の話に戻しませんか?」

 突然の横やりに、殺意の込められた視線を向けられたと思うのはきっと気のせいではない。

 応接間を抜けた先、階段の端に隠れて成り行きを見守る梅芳が盛大に舌打ちしたことを国府谷は知らない。

 「そ、そうですね。あの…ふぅ」

 深い深呼吸を三回繰り返し、小野は思い切ったように臥雲を見た。

 「妻を殺しましたたすけてくだいおねがいします」

 二度目の告白の後、沈黙が周囲を支配した。

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