甘言師、臥雲旦陽の甘い毒

 再び訪れた故意の静寂に、国府谷はいい加減耐えきれなくなった。

 「臥雲さん、助ける気があるのかないのかどっちですか?」

 唐突な結論の追及に、驚いたのは小野も同じだった。

 「え、あぅ、その」

 冷静な臥雲とは別に酷く驚き慌てた様子で汗を流していた。

 臥雲は細目をさらに細くし、机の上に乗せていた人差し指を規則正しいリズムで机に押し当てながら呟いた。

 「殺人の動機は」

 「え?」

 驚きの言葉に予想しなかったであろう質問への疑問が含まれている。

 「…動機です。衝動的ですか?計画的に?」

 そこまで聞き、慌てて小野が足元に置いていたくたびれた黒い鞄を持ち立ち上がった。

 「わ、わかっていますよ!証拠をつかむ、ために!自供させる気ですね!」

 その場を跳ねる様に立ち上がった小野が臥雲を指さし、その手を何度も縦に振った。

 「だ、騙そうとしたって、だめだ!」

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