甘ーいheartを召し上がれ?【完結】
“誰か”が仕掛けた罠に、あたしは見事、嵌まってしまった。


…ううん。

嵌まりたくて、嵌まったの。


“奏弥”が仕掛けた罠に、あたしは自分から掛かったんだ。


…もう抜け出せないから――。





「…咲姫、」

腕の力を弱めて、奏弥はあたしの顎を持ち上げた。


…視線が、絡まり合う。


「な…に…?」

動揺して、あたしは蚊の鳴くような声で尋ねた。

すると奏弥は自分の手を、あたしの顎から、頬へと移した。


「…ごめん、な…


痛かっただろ…?」



…奏弥のそんな言葉を聞いて、あたしは胸が傷んだ。


そんな事、気にしてたんだ…。


「……いの、に…」





「…は?」


ボソッと、小さく紡がれた言葉。

俺はうっかり、聞き逃してしまった。

だが咲姫は、その一言を引き金に、また瞳に涙を溜めている。


(頼むから、その瞳(メ)だけは、辞めてほしい…。)


俺は小さく溜息をついた。



…愛おしくて。

咲姫が、愛おしくて

ホント…どうしようもない。


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