甘ーいheartを召し上がれ?【完結】

…あの時の母のような想いは、


もう、誰もしてはいけない。



――そう思っていたにも関わらず、次の標的が、あたしになったのだ。


(絶対に…


墜ちてなんか、やらない)



あたしはそう、心に決めていた。






――でも、あの時の彼の瞳に、


あたしは酷く、心を打たれたんだ。



それは、あたしの父や咲兄と同じで。


…何処か、遠くを見詰めるような、

儚い色を帯びていたのだ――。






「咲姫…」


「ふぅ…っ、ん…」


絡み取られる舌。

奏弥の口付けは心地良い。

確かに上手で、力が抜けていくような、甘い痺れに犯されていく。


綺麗に並ぶ歯の裏を、ゆっくりと丁寧に舐められ、あたしはゾクッ…と身震いした。


離れる唇の隙間から繋がる、銀色の糸。

肩で息をしながら、もう我慢出来ないと、お互い見詰め合う。



絡められた指同士が、キュッと握られて

これから始まる、甘い事情の合図となった…。



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