雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

聡樹が帰った後、あたしは部屋で1人ベッドに座ってスマホを見つめていた。


駿からのメッセージをもう1度確認して、アドレス帳のページを表示させる。


友達や美容院などで埋め尽くされたあたしのアドレス。


どれもとても大切で、気っていい関係なんてこの中には1つもないと思っていた。


だけど……大切なものを1つ得るためには、1つ失わなければならない。


誰かが言っていた言葉を思い出す。


あたしは聡樹と生きる道を選んだんだ。


その道をスムーズに歩いて行くためには、どうしても捨てなければならない事があった。


……駿への気持ちだ。


あたしは画面に駿のアドレスを表示させて、大きく息を吸い込んだ。


あたしは間違った事なんてしていない。


こうすることが、きっと一番の最善策なんだ。


だから、駿のアドレスを消したって辛いことなんてなにもない。


大丈夫、大丈夫……。


自分自身にそう言い聞かせて、あたしは駿のアドレスを消したのだった……。
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