雪の降る日に、願いを消して
崩れる
『お兄ちゃんは誰とも付き合わない』


カラオケ店に入っても萌ちゃんの言葉が頭の中でグルグルと回っていた。


あんなの嘘だ。


お兄ちゃんを取られまいとして嘘をついているに決まっている。


でも……もし、万が一本当だったら?


桜子も駿には告白できないと言っていた。


その理由が、駿が誰とも付き合わない人だと知っていたからだったとしたら?


どうして駿は誰とも付き合わないの?


誰が相手でもダメってこと?


疑問が浮かんでは消えて行き、頭の中はパニックだ。


大きなため息を吐き出した時、音楽が途切れた。


聡樹の歌が終り、あたしは慌てて拍手した。


正直、歌なんて全然聞いていなかった。


「さすが、上手だよね」


そう言い、笑顔を向ける。


聡樹の歌声は今まで何度も聞いて来たから、そのくらいの言葉はすぐに出て来た。


歌い終えた聡樹はあたしの隣に座った。


「あたしは何歌おうかなぁ」


そう言いながら機械に手を伸ばす。
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