雪の降る日に、願いを消して
その手を聡樹が掴んだ。


あたしは視線を隣にいる聡樹へ向ける。


歌い終わった後で、少し頬が上気している聡樹。


「今の歌、ちゃんと聞いてた?」


「え……も、もちろんだよ」


あたしは慌てて頷いた。


ずっと考え事をしていたことを、聡樹は見抜いていたのかもしれない。


「今の歌の歌詞、鈴に向けて歌った」


そう言われて、あたしは目を丸くして聡樹を見た。


聡樹ってそんな事をするキャラだっけ?


いや、それよりなにより、聡樹はさっき何を歌っていたんだっけ?


あたしは何を言っていいのかわからずに、ただ聡樹の目を見つめていることしかできなかった。


「鈴の気持ちも知りたい」


そう言い、掴んでいる手に力を込める。


それは痛いほどであたしは思わず顔をしかめた。


「あたしは……聡樹の事、好きだよ?」


言ってから、嘘だと気が付いた。


ついさっきまで駿を見る前までは確かに聡樹の事を好きだと思っていた。
駿の存在が自分の中でどんどん小さくなっていくのもわかっていた。
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