雪の降る日に、願いを消して
『一応』で付き合う事がこんなに苦しくて、相手を傷つける事だなんて、思ってもみなかった。


あたしは今どんな顔をして聡樹を見ているのだろう?


聡樹はあたしの顔を見た瞬間、今にも泣き出してしまいそうな顔を浮かべた。


あたしが何も答えなくても、全部理解したのが感じられた。


そして、いつもと変わらない笑顔を作って「なに本気にしてんだよ」と、笑い飛ばす。


あたしの腕を掴んでいた聡樹の手は微かに震えていて、そのままスッと離された。


「俺ちょっとトイレ行ってくるから」


そう言い、聡樹はあたしと目を会わせず部屋を出た。


カラオケ画面から軽快な音楽が流れて来る中、あたしは聡樹がさっき歌った曲を確認した。


それは愛情表現とはかけ離れた、昔流行っていた戦隊アニメのオープニング曲だった……。
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