雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

1人の時間は苦痛じゃなかった。


撮り溜めしていたドラマを見て、好きな音楽を聞いて、適当にご飯を作って食べる。


毎週のように遊びに出かけていたから、こんな日曜日もたまにはいい。


両親が帰って来る前に洗濯物を取り込んで、晩ご飯のおかずを作っておく。


まるで主婦みたいなことをしている自分が新鮮だった。


夕方になり、玄関のチャイムが鳴った。


時間を確認すると、丁度お母さんが仕事から帰って来る頃だった。


「はい」


あたしは足早に玄関へ向かい、鍵を開ける。


ドアを開けた瞬間、ちゃんとのぞき穴から外を確認するべきだったと後悔した。


目の前に立っていたのは聡樹だったのだ。


聡樹は風邪を引いた時と同じようにコンビニ袋を持っている。


「よぉ、鈴。今日はなにしてた?」


そしていつもの笑顔を向ける。


昨日あんなことになってしまったばかりなのに、聡樹は全く気にしている様子じゃない。
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