雪の降る日に、願いを消して
きっと、今でもあの話をしたことを後悔し、そしてあたしの事を心配してくれているだろう。


「だから、紗英は悪くない。悪いのは俺なんだ。俺が鈴の事を諦めきれずにダサイことしたからだ、本当にごめん」


聡樹はそう言い、頭を下げた。


「本当に……聡樹が紗英にそんな話をしたの?」


聡樹の優しい嘘なのかという思いがあり、あたしはそう聞いた。


「本当だ! 紗英は悪くない!」


バッと顔を上げてそう言う聡樹。


嘘をついているようには見えない。


たぶん、本当の事を言っている。


「そっか……」


ふっと体の力が抜ける感覚がした。


聡樹を傷つけてしまった。


その後悔が嘘のように晴れて行くのを感じる。


「あたしの方こそごめん。『一応』で付き合うなんて、本気で考えちゃって、聡樹の事を傷つけた」


「それは、全部俺のせいだから!」


頭を下げたあたしに向かって聡樹が言う。


その必死な様子に思わず笑ってしまった。


「お互い様ってことで、いいかな?」


顔を上げてそう聞く。


聡樹は一瞬目を見開き、そしてほほ笑んだ。


「もちろん。それに、一緒にいてやっぱり鈴には駿しかいないんだなってよくわかった。これからは俺、鈴の事を応援するよ」


「聡樹……」


気持が届かなかった辛さはあたしもよく知っている。


そんな中応援すると言ってくれる聡樹に、あたしは心の奥が暖かくなったのだった。
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