雪の降る日に、願いを消して
けれど、それ以来鈴は毎日俺より先に登校して来て駿への気持ちを書いていた。


見つけるたびに胸が痛んだが、鈴の真剣な気持ちを知る事ができた。


俺は部室で着替えてから教室へ移動するようになった。


汗をかいた肌にシャツがへばりつくのが不愉快で、第2ボタンまでを外していた。


『よぉ鈴、今日も早いな』


『ちょっと聡樹、ボタンくらい留めてよ』


そんな会話を毎日のように繰り返すうちに、駿は鈴の事を見ていない事も見えて来た。


このままじゃ鈴の気持ちは届かない。


好きな女が傷ついてしまう。


俺になにかできることはないか?


そう考えた時、俺が鈴の彼氏になる事を思いついたんだ。


俺と付き合う事で駿への気持ちを忘れさせてやるんだ。


だから俺は紗英にあんな話を吹き込んだんだ。


『一応』でも付き合う事が決まれば、後は鈴を楽しませるように頑張るだけだった。


幼馴染の俺は鈴の好きな物や好きな場所を完璧に把握できている。


付き合う事ができれば後は簡単だ。
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