雪の降る日に、願いを消して
「桜子もさぁ、もう少し気を遣ったりってできないのかな? あんなにヘラヘラしちゃってさ」


駿と付き合えたことがよほどうれしかったのだろう。


桜子はずっと表情を緩めっぱなしだった。


それを見ている事は辛かったけれど、あたしが桜子の立場だったとすれば、同じように表情がゆるみっぱなしになっていただろう。


「でも、これで駿は幸せになれるんだよね?」


あたしの言葉に紗英が「それは……」と、言葉に詰まってしまった。


駿が自分で考えて出した答えなら、幸せになれるに決まっている。


聡樹はあたしの事を応援してくれると言ってくれた。


好きな人の幸せを願う事は辛い事だけど、でも悪い事じゃない。


そう思うと、少しだけ気持ちが軽くなった。


「あたしは応援はできないかもしれないけれど、でも、2人を責めるつもりはないよ」


あたしはそう言い、冷たくなってきた指先をこすり合わせたのだった。
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