雪の降る日に、願いを消して
いつも駿への気持ちを書いていた黒板が、どんどんカラフルに塗りつぶされていく。


聡樹が書いたのはピンクのブタだった。


意外と可愛らしく描けている。


紗英が書いたのは黄色いヒヨコだ。


あたしは2人の隣に立って白いチョークを手に取った。


思いつくままに指を動かしていると、隣にいた紗英が「プッ」と、笑った。


「それってさ、音楽の宮崎先生?」


「わかる?」


音楽を教えている男の宮崎先生はとても印象的な顔立ちをしているのだ。


丸い岩のような顔に、ゴマみたいな小さな目。


髪の毛は角刈りで、分厚い唇。


あたしはこの先生を授業中に観察し、ノートに隅に似顔絵を描く事が何度もあった。


「すっげぇそっくり」


あたしの絵を見て聡樹が笑う。


それからあたしたちは先生たちの似顔絵を描いて行った。


特徴的な顔をしている先生は描きやすくて、よくある顔立ちの先生ほど書きにくい。
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