雪の降る日に、願いを消して
制服が暑いのかシャツ1枚の姿でとても寒そうだ。


そのシャツも第2ボタンまで外されていて、肌に汗が滲んでいるのが見えた。


「そんな格好して、風邪ひくよ?」


あたしは呆れながらそう言った。


聡樹は自分の机へと向かいながら「今めっちゃ暑いんだよ」と、手で自分の顔をあおいだ。


聡樹だけを切り取ってみるとまるで真夏のようで、あたしは笑ってしまった。


「なにがおかしいんだよ?」


「別に、なんでもないよ」


聡樹は年がら年中汗をかいていた。


サッカーの為の汗。


将来はもちろんプロを目指しているらしくて、子供の頃から大きな大会にも出場している。


特別才能があったわけではないらしいが、今ではなかなかの腕前まで上達していた。


聡樹を見ていると、頑張ればなんでもできる気がしてくる。


「お前は毎日早いな。1人でなにしてんだよ?」


ガタッと椅子を引いて腰を下ろした聡樹にそう聞かれて、あたしの心臓が大きく跳ねた。


いつか聞かれると思っていたその質問に一瞬呼吸が止まる。


だけど次の瞬間に大きく空気を吸い込んで、笑顔を浮かべた。


「黒板を綺麗にしてるの」


そう言いながら聡樹を横目で見る。


「は? 黒板?」


「そう」


聡樹は目をパチクリさせてあたしを見ている。
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