雪の降る日に、願いを消して
駿の態度は日によって明らかに違う。


桜子もそれに合わせて態度を変えている。


それは駿が駿であって、でも全くの別人だからじゃないだろうか?


昨日桜子が駿にくっついて行かなかったのは、その別人が出てきていたからじゃないだろうか?


そんな、非現実的な事が頭の中をぐるぐるとまわりはじめる。


非現実的?


本当にそうなのかな?


実際に二重人格の人はいる。


精神的なものが原因だとか、病気だとか、理由は様々あると思うけれど、その人たちは確実に実在する。


駿がその1人であっても、なんら不思議はないんじゃないか?


あたしの口から、また空気が漏れて出て行った。


視線を紗英へと戻すと、紗英はうつむいていた。


自分の言った事を後悔しているのか、唇を強く噛んでいるように見えた。


「そうだとすれば、今までの行動も納得できるよな」


沈黙を破ってそう言ったのは聡樹だった。


聡樹は眉間にシワを寄せて難しそうな顔をしている。


「体調を崩して倒れた後、駿は元気になって戻って来た。その時には人格が入れ替わっていたのかもしれない。桜子は駿が二重人格だと知っているから、告白はできなかった。うん、全部つじつまが合う」


聡樹はそう言ってあたしを見た。


「……けれど桜子は駿と付き合い始めた。きっと、その時に何かがあったんだ」


あたしはどうにか声を絞り出してそう言った。
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