雪の降る日に、願いを消して
黒板の前に立っているのだから、黒板に関する言い訳をしなければいけないと、普段から考えていたのだ。


「なんでまた黒板?」


聡樹は首をかしげてそう聞いて来た。


この教室内で綺麗にしなきゃいけない部分はきっと、もっと他に沢山ある。


例えばゴミ箱を空にするとか、ロッカーの中を整理するとか。


黒板を綺麗にするよりもそっちの方がきっとみんな気が付いてくれて、感謝もされるかもしれない。


「放課後に落書きして帰る子がいるの」


あたしはなるべく自然な感じでそう言った。


「落書き?」


「うん。他のクラスの子かなぁ? 見たことない子たちなんだけど、時々このクラスに入って落書きしてるの」


少し無理のある言い訳だと途中で気が付いて、ゴクリと唾を飲み込んだ。
< 16 / 312 >

この作品をシェア

pagetop