雪の降る日に、願いを消して
誰?
気が付くと目の前にお母さんがいた。


「鈴、あんたすごい熱じゃない!」


怒鳴るようにそう言われて、自分の体がとても熱い事に気が付いた。


それよりも、あたしは一体どうしたんだっけ?


周囲を見回すと見慣れた家のリビングだ。


あぁ、そっか。


ここまで帰ってきてそのまま倒れてしまったんだった。


思い出して、上半身を起こす。


その瞬間ひどいメマイを感じてまた横になってしまった。


テーブルには薬局で買って来た紙袋が置かれている。


「1人で早退して帰って来たの? 無茶なことして! なにかあったら会社に連絡しなさいって言ってるでしょ!」


怒鳴りながら水枕を用意してあたしの頭の下に敷いてくれるお母さん。


リビングのテーブルを横へ移動させて、そこにお客さん用の布団まで敷いてくれた。


「ごめんなさい……」


謝りながら布団まで移動して体を横にする。


「今お粥温めるから、食べて薬飲んでしっかり直しなさい」


「……はい」


叱られてしまって気持ちは落ち込むけれど、薬局で見た駿の姿はしっかりと覚えていた。


あれは間違いなく駿だった。


けれど今日駿は学校を早退していないと紗英は言っていた。


一体どういうことなんだろう?


考えると、すぐに頭痛が襲って来た。
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