雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

今日ばかりはお母さんも仕事を休まず、あたしは1人で寝ていることになってしまった。


もう体調も悪くないし、暇を持て余してしまう。


だからといって動き回っていたら、また叱られるし、仕方なくテレビをつけて布団にくるまっていた。


テレビ番組ではお笑い芸人たちがネタを披露していて、会場を沸かせている。


だけどあたしの頭の中には駿の顔がちらついていてちっともテレビに集中できない。


大御所のお笑い芸人がふんどし姿でテレビ画面に映ったところで、あたしはテレビを消した。


途端に辺りは静寂に包まれる。


静かなリビングに、外の生活音が聞こえて来る。


洗濯器や掃除機を使う音。


ピアノの音。


車が行きかう音。


それらは1つの音楽のようになって優しくあたしを包み込んだ。


少し眠ろう。


そう思って電気を消し、目を閉じる。


薬の副作用も手伝い、すぐに睡魔が襲って来た。
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