雪の降る日に、願いを消して
☆☆☆

4人掛けのベンチに3人で座って、あたしは薬局で見た駿の事を話した。


手には暖かなココア。


もう風邪なんて引いている場合でもない。


あたしの話に2人は真剣な表情で耳を傾けている。


2人の手にはコーヒーが握られている。


そして昨日、萌ちゃんからメールがあった事も伝えた。


「それはどうなんだろうな? 駿は昨日スマホを持っていたかどうかわからないしなぁ」


聡樹がそう言い、左右に首をふった。


「薬局で見た駿って、人間違いじゃないの?」


紗英にそう聞かれて、「あたしが見間違うと思う?」と、質問で返した。


「確かに、この中じゃ鈴が一番駿の事を見てきてるよね」


「うん、そのつもり。仮にそっくりな人だとしても、このあたりでそんな人見たことがないんだよね」


あたしは昨日考えたことをそのまま口にした。


「そう言われればそうだよな。だけど駿は昨日登校してきていた……」


聡樹がそう言い、コーヒーを1口飲んだ。


「もしも、駿が2人いるのだとしたら?」


紗英の言葉にあたしも聡樹も目を見開いた。
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