雪の降る日に、願いを消して
紗英は真剣な表情で話を続ける。


「今までの駿の行動を思い出してみてあたしたちは駿は二重人格だと思った。でもそうじゃなくて、本当に駿が2人いたとしたら?」


1人の人間が2人存在するなんて、そんなファンタジーみたいな話現実世界であるわけがない。


紗英の言っていることは突飛過ぎる。


でも……ありえなくはないかもしれないという考えが浮かんできた。


「二卵性双生児」


あたしは小さな声でそう言った。


紗英は頷く。


「駿は双子の兄か弟で、時々もう片方が学校へ来ていた。そう考えると行動の違いにも納得できるものがあるよね」


「でも、駿に兄弟がいるなんて聞いたことがないぞ」


聡樹が口を挟んだ。


コーヒーはすでに空になっていて、難しい表情を浮かべている。


「それは言わないんじゃないの?」


紗英の言葉に「なんで?」と、聡樹が聞く。


「例えば最初から交互に学校へ来る事を目的としていたら? わざわざ自分に双子の兄弟がいることを誰かに伝えたりする?」


「ちょっと待ってよ紗英。紗英は駿が入学した当初から兄弟を入れ違えながら登校してきたって思ってるの?」


「もちろんだよ」


紗英は躊躇なく頷いた。


あたしは驚いて二の句を継ぐことができなかった。
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