雪の降る日に、願いを消して
頭の中で考えていた時にはいい言い訳が思いついたと思っていたのに、声に出すとこれほど怪しくなってしまうなんて、思ってもいなかった。


「なんでまた、うちのクラスの黒板を……?」


「そ、それはわからないけど。自分のクラスの黒板には書けない事が書いてあったよ」


咄嗟にあたしはそう言っていた。


「へぇ? それってなに?」


聡樹に聞かれてあたしは頭の中が真っ白になった。


咄嗟に出た嘘に信憑性を持たせなきゃいけないなんて、あたしにはきっとできない。


2人の間に沈黙が流れる。


聡樹は何度か瞬きをしてあたしを見て、やがてシャツのボタンを留めはじめた。


汗がひいて寒くなって来たのだろう。


「好きな人の……名前だった」


開きすぎるくらい間を開けて、あたしはそう答えた。


瞬間、顔がカッと熱くなるのを感じて聡樹から顔をそむけた。


「へぇ……それなら自分のクラスに落書きなんてできねぇな」


「だ、だよね。だからこのクラスに来てるのかも」


「なんで好きな奴の名前なんて書くんだろうな?」
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