雪の降る日に、願いを消して
そう言って駿がこちらへ視線を向ける。

あたしは居心地が悪くなって一歩後退した。


感情のない駿の言葉が胸をえぐる。


駿にとってあたし告白はすでに終わったことなんだ。


こんなに好きで、こんなに気持が黒くなってしまっていても、もう終わった事なんだ。


わかっていたことなのに、あたしは何度でも胸をえぐられてしまう。


「そんな言い方ないだろ!? 鈴は本気でお前の事が好きなんだぞ!」


聡樹が声を荒げてそう言っても、駿は表情を1つも変えなかった。


桜子の方が聡樹の言葉に反応し、眉を下げてあたしを見た。


同情するような顔に苛立ちを覚える。


「俺だってその気持ちを本気で考えた上で断ったんだ」


駿の声は相変わらず冷たい。


まるで感情をどこかへ置き忘れてしまったようにさえ思う。


「話ってそれだけ? 俺用事があるから」


「ちょっと待てよ! 昨日鈴が薬局でお前を見かけたんだ。お前はその時授業に出てた。これは一体どういうことなんだよ?」


聡樹がまくしたてるようにそう聞いた。


駿はそれでも表情を変えない。


「なにを言ってるのか意味がわからない。他人のそら似だろ?」


駿はそう言うと、あたしたちに背中を向けて歩き出した。


桜子が慌ててそれについて行く。


まだ話は終わっていない。


そう思うのに、言葉が喉の奥に引っ付いて出て来ない。


駿の背中を呆然として見つめていると、不意に桜子が振り向いた。


あたしと視線がぶつかり、身構える。


すると桜子は聞こえない声で「ごめんね」そう言ったのだった。
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