雪の降る日に、願いを消して
早退する
駿が倒れて数分後、あたしは自分の鞄を掴んで生徒玄関へ来ていた。


さっきクラスメートが言っていた『午後からの体育は参加する』その言葉を聞いて、ハッとしたのだ。


駿が2人いるのだとしたら、いつもそのタイミングで入れ替わっていたのではないか。


そう考えた。


そうだとすれば、今教室で倒れた駿はここを通って家に帰っているかもしれないのだ。


あたしは病み上がりいう事を武器にして早退し、ここで駿が出て来るのを待っているのだ。


スマホで時間を確認すると、そろそろ午後からの体育が始まる時間だ。


さっき来た聡樹からのメールでは駿は来ていないということだった。


まだ保健室にいるのだろうか。


生徒玄関に誰かが来る気配はない。


あたしは先生に見つからないように下駄箱の陰に隠れて様子を伺う事しかできない。


それがじれったくて、地団太を踏んでしまいそうになる。
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